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詩
月下美人 森田幸子
車のクラックションの音……小走りに、家の前の門へ……
門の横には、ラクダの首のように長く垂れた蕾が葉枝に付いて置いてあった……
(私は、今夜咲く花なのよ、誰かに見てもらって)と、私に叫んだ!……
私は、ポキ、ポキ、ポキと、手折り、
五つのラクダのような、蕾を折った。
暑い日、一時間以上、車の中で、すっかり、萎れて、
見るのも、哀れ……
私は(今夜咲く花なのです、萎れてしまいましたが……)
他の方なら(こんな、萎れたものを)ぽいと、
ゴミ箱の中に捨てられたと思う……
九時、十時、十一時、……
「綺麗に咲きました」しっかり、水を吸い立派に咲いた、月下美人……
月の光を受けながら……神秘に甘い香りを漂わせながら……
力一杯咲き開き(私は一夜限りの花なのです、私に出会えて、幸運です……)
満月の十一時の事でした。
一滴の露よ 森田 幸子
朝八時の太陽の光をあびて
銀色のずいきの葉の上の一滴の露
こぼれないようにしっかり胸の中に吸い込んだ
太陽が出れば葉の上の露ははかなく消えてしまう
私はこの一瞬を見逃さなかった
生まれし七十七年この広い世界の中でこの一滴の露が
私に勇気を与えてくれた
見違えるように光に輝く紅葉
今日も一滴の露はどこかの葉の上の露となる
太陽が出る前にはかなく消えて行かなくて
誰かの希望の光に吸い込んでもらって……
このコロナの時代一滴の露よ……
希望の光に吸い込まれろ…… 日系文学那六十八号より転載


一鉢の蘭 森田 幸子
長かった、暗いコロナ自粛生活、今日からラジオ体操が始まった
予防注射のお陰様で……ボツボツ会合も開かれると言う……
我が家は、会場に使って頂いていた
一人一人に抱擁するだけで、エネルギーを頂いていた
又一人一人と抱擁する時が来るかと思うと心が躍る
今日か、明日かと待ち続けあれこれ二年半……
サーラにはいつも蘭の花が待ち続けていた
無言でも温かい笑顔、優しい香りを漂せながら……
人と人との和を眺め乍……
憩いの場が戻って来る
一人一人の強い抱擁、お互いがエネルギーをもらい、憩いの場が……
無言で微笑む一鉢の蘭
私はこの無言の一鉢のはなになりたい 日系文学七十号より転載

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